良いイシューの3条件
成果につながる思考の起点は、「良いイシュー」を見極められているかどうかにある。 ここでいう良いイシューとは、単に答えが難しい問いではない。 マネジメント判断や戦略選択に直結し、意思決定の質を左右する問いである。
良いイシューには、次の3つの条件がある。
- 本質的な選択である
- 深い仮説がある
- 答えを出せる
本章では、特に最重要である「本質的な選択であること」に焦点を当てる。
条件① 本質的な選択肢である
インパクトのあるイシューは、必ず何らかの「本質的な選択肢」に関わっている。 言い換えれば、結論が「右か左か」で大きく意味合いが変わる問いでなければ、イシューとは言えない。
本質的な選択肢とは、その後の打ち手や戦略の方向性を決定的に分けるカギとなる質問である。
本質的な選択肢の例
例えば、ある商品Aの売上が伸び悩んでいる場合、次の2つは本質的に異なる。
- 〈Aに商品力がない〉のか
- 〈Aに商品力はあるが、販売方法が悪い〉のか
どちらかによって、見直すべきポイントは根本から変わる。 前者であれば商品開発そのものが課題になり、後者であれば営業や販促の仕組みが焦点になる。
同様に、あるコンビニエンスストアチェーンで「全体の売上が下がっている」場合、 最初に問うべきイシューの一つは次のどちらかだろう。
- 〈店舗数が減っている〉のか
- 〈1店舗あたりの売上が下がっている〉のか
前者であれば出店戦略や退店・離脱率が論点になる。 後者であれば、店舗づくりや運営、商品構成が問われる。 このように、本質的な選択肢を含んでいるかどうかが、イシューの条件となる。
「なんちゃってイシュー」を見抜けるか
一見もっともらしいが、実はイシューではない問いも多い。 これをここでは「なんちゃってイシュー」と呼ぶ。
なんちゃってイシューの典型例
ある飲料ブランドが長期的に低迷し、全社で立て直しを検討しているとする。 このとき、よく出てくる問いが次のようなものだ。
- 〈今のブランドで戦い続けるべきか〉
- 〈新ブランドにリニューアルすべきか〉
一見、重要そうに見えるが、この段階ではまだイシューとは言えない。 なぜなら、まず明らかにすべき前提が抜けているからだ。
本来先に問うべきなのは、次のような選択肢である。
- 〈市場・セグメントそのものが縮小している〉のか
- 〈競合との争いに負けている〉のか
もし市場自体が縮小しているのであれば、 ブランドの方向性修正以前に「狙う市場そのものを見直す」必要がある。 この場合、「ブランドの修正」はイシューですらなくなる。
このように、考察を進めるとイシューではないと分かる問いが「なんちゃってイシュー」である。 だからこそ、議論の初期段階でイシューの精度を徹底的に高めることが重要になる。
ゼロベースで全体を眺めるという姿勢
イシューを見誤る原因の多くは、無意識の前提に縛られていることにある。
- 今この検査工程があるから
- 今やっている事業は続ける前提だから
こうした前提が固定されると、思考の幅は一気に狭まる。 本質的なイシューに迫るには、一番高い視点から全体を眺め、 常識やルールをいったん外してゼロベースで考える必要がある。
イシューは「動く標的」である
イシューとは、「今、答えを出さなければならないこと」である。 そのため、担当部門や立場、環境によってイシューは変化する。
ある人にとってはイシューでも、別の人にとってはそうでない、ということは珍しくない。
重要なのは、「以前こう言っていたかどうか」ではない。 問うべきは常に、今の対策は、今のイシューに向かっているかである。
方針を変えないこと自体が正しいのではない。 イシューが変われば、判断や打ち手が変わるのは当然である。 ここを誤ると、「一度決めたことを愚直に続けること」が目的化してしまう。
考えるための問い
- Q:課題を全体から眺められていないために、部分最適に陥っている例を挙げよ。
- Q:環境や立場の変化によって、イシューが変化していく具体例を挙げよ。
コメント