良いイシューの3条件
成果につながるイシューには、次の3条件がある。
- 本質的な選択である
- 深い仮説がある
- 答えを出せる
本章では、2つ目の条件である「深い仮説があること」に焦点を当てる。 仮説の深さは、分析技術やフレームワーク以前に、思考の立ち位置で決まる。
深い仮説を立てるための前提
仮説を立てるためには、少なくとも次の2つの条件を満たす必要がある。
- 常識や当たり前を疑っていること
- 物事を構造として捉えようとしていること
常識を否定するという出発点
常識を否定する仮説を深めるための、最もシンプルで効果的な方法がある。 それは、一般的に信じられていることを一度すべて並べ、その中で否定できるもの、あるいは異なる視点で説明できるものがないかを考えることである。
言い換えれば、「常識」「当たり前」「業界ルール」とされているものを、 思考の前提から一度外すということだ。
常識は論理か、ただの慣習か
例えば、「目視検査工程はあるべきだ」という考えがあるとする。 しかし、その根拠をたどると「以前から存在しているから」という理由しか出てこないことがある。
この場合、目視検査工程は論理ではなく、単なる慣習にすぎない。 費用対効果の観点で検証すれば、本来不要な工程である可能性もある。
もし、その工程に人員を割き続けることで損益が悪化しているのであれば、 「企業の目的とは何か」という、より上位の問いに立ち返らざるを得ない。
疑うべきは「ルール」ではなく「論理性」
ここで重要なのは、「ルールを破れ」という話ではない。 疑うべきなのは、そのルールに論理性があるかどうかである。
基本となる問いは次の3つだ。
- それは本当に意味があるのか
- どの程度の意味があるのか
- 費用対効果の観点を満たしているか
これらに答えられるのであれば、そのルールは妥当である。 逆に答えられない場合、そのルールはイシューの出発点として疑われるべき対象になる。
業界の廃棄基準や社内慣行などは、こうした検証を通すことで、 初めて仮説の対象として扱えるようになる。
新しい構造で説明するということ
人間の理解は、「つながり」を理解した瞬間に一気に進む。 このつながりとは、すなわち構造である。
深い仮説とは、事象を新しい構造で説明しようとする試みだと言える。 構造を理解するための代表的なアプローチには、次のパターンがある。
① 共通性の発見
2つ以上の事象に共通点が見えたとき、人は「理解できた」と感じる。
例えば、現場改善を進めているにもかかわらず損益が上がらないケースを分析し、 その要因構造を図に落とし込むことができれば、 他の製造業にも同じ構造が当てはまらないかを検証できる。
分析の第一歩は、「この構造はどんな構成要素で成り立っているのか」を分解することである。
② グルーピングの発見
複雑で無数に見える事象を、意味のあるグループに分けることで、 判断可能な形に変えることができる。
これは帰納法的なアプローチであり、 拾い集めたデータを整理することで構造を浮かび上がらせる方法である。
例えば不良分析において、個別事象を眺めるのではなく、 工具の劣化、材料特性、作業方法といったグループに分けることで、 仮説を立てられるレベルのイシューになる。
③ ルールの発見
離れて見える2つ以上の事象に、普遍的な仕組みや関係性があると分かったとき、 人は強い理解を得る。
ビジネスでは数式化できるほど明確なルールは少ないが、 現場では「なんとなく分かっている」パターンが数多く存在する。
その感覚を言語化し、事実で裏づけることで、 単なる経験則は再現可能な仮説へと変わる。
ただし、この作業には、組織が目指す目的を理解していることが前提となる。 目的と切り離されたルールは、仮説にはなり得ない。
考えるための問い
- Q:自分が無意識に前提としている常識やルールを挙げよ。
- Q:それらを検証し、論理性が「ある」「ない」を理由とともに述べよ。
- Q:具体的な事例を用い、構造として説明せよ(MECEに近い問いとして捉えること)。
- Q:実例を用いてグルーピングを行え(帰納法的に整理すること)。
- Q:新しいルールや関係性を発見できた事例があれば述べよ。
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